ピアノの情報ブログ

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「ピアノはなぜ黒いのか」の著書でお馴染みのスーパーピアノアドバイザー斉藤信哉さんによる連載コラムをお届けいたします。
※旧サイトの「ピアノなんでもコラム」をブログ形式で再掲しています。

なぜピアノが黒いのか?

幼稚園や学校、あるいは公民館などの公共施設で、木目のピアノを見たことはありますか?

きっと、ほとんどの方が黒いピアノしか目にしたことがないと思います。
つまり、「ピアノ=黒いもの」という先入観が、知らず知らずのうちに、私たちの脳裏に焼きついしまっているのです。

ではなぜピアノが黒いのかというと、その最大の理由は、黒いピアノの方が価格が安いからです。

実は、50年以上前は黒のピアノのほうが高かったのです。
なぜ黒のほうが高かったのかというと、もともと木目仕上げのピアノに黒く塗装を施していたからです。

つまり余計な手間がかかる分、高くなるわけです。
だから昔の黒塗りのピアノの塗装をこそげ取ると、美しい木目が出てきます。

拙著「ピアノはなぜ黒いのか」にも書きましたが、昭和35年(1960年)のヤマハのいちばん安価のピアノが
19万5千円。
その年の大卒男性初任給は13,080円ですから、ピアノはその15倍の価格。
現在の初任給は20万円ほどですから、これを15倍すると、およそ300万円。

今だったらどうでしょう。
「こんなに高いのなら、ピアノのレッスンやめようか…」なんて考えてしまうかも。
ところがところが、その当時、ピアノは飛ぶように売れていたのです。

今ではとても考えられないことですが、昭和35年に13,080円だった初任給は、7年後の昭和42年には、なんと26,150円へと倍増しています。

これがいわゆる高度経済成長で、翌年には給料もボーナスも必ず上がることが約束されていた時代だったのです。
高価な物を分割払いで買っても、まったく不安がないわけですから、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、自動車なども、急速に普及していきました。

こうした時代を背景に、ピアノの需要もうなぎ登り。ところが、たとえばヤマハの昭和35年当時の生産台数は、年間でも2万台ほど。
これではとても需要に応えることなどできません。

そのような訳で、ヤマハ、カワイの二大メーカーは、次々に大量生産方式へと転換していきました。

黒いピアノを見て育った子共たちの脳裏には、「ピアノ=黒いもの」という先入観が出来上がる

ピアノに使われる木材は、伐採したばかりの時には多量の水分を含んでいます。
これを乾燥させるのが、ピアノづくりでいちばん時間のかかる工程です。

数年から、長いものでは10年、いや20年という話しも聞いたことがあります。
これを数日で終わらせてしまうのが、ヤマハやカワイが取り入れた木材の人工乾燥です。
木材を乾燥庫に入れ、熱を加えたりして、強制的に水分を取り去ってしまうのです。

この人工乾燥の導入により、ヤマハやカワイがピアノの大量生産が実現できたといっても過言ではないでしょう。
そして、均質に大量のピアノをつくるのに黒い塗装はうってつけ。なにしろ下地にどんな木を使おうとも、すべて隠れてしまいますから。

一方、木目仕上げでは、下地の上に薄い化粧板を貼り付けてつくりますが、ピアノ全体の木目を揃えなくてはなりませんし、最後の仕上げにしても、艶出し、艶消しなど色々ありますから、とても手間がかかります。
当然のことながら価格は高くなります。

というわけで、幼稚園や学校などでピアノを買い揃えるときに、わざわざ高いピアノを 買うはずはありませんから、必然的に黒仕上げのピアノということになります。そして、黒いピアノを見て育った子共たちの脳裏には、「ピアノ=黒いもの」と いう先入観が出来上がるというわけです。

これでピアノの外装は黒が多い理由、お分かりいただけましたでしょうか? あともう一つの大きな理由があることをお話ししましょう。

ピアノが黒いもう一つの大きな理由

お子さんが、親に何か買って欲しいとねだるとき、「みんな持ってるから」と言うことがありますよね。
「みんな持ってるから」と言われれば、親も仕方ないから買ってあげる。

でもこれ、もしもドイツで同じことを言うと、親御さんは「みんなが持っているならダメ」と応えるとドイツ在住の日本の方から聞いたことがあります。子どもに個性、自分らしさを身につけさせることを第一と考えるからなのだそうです。

考えてみてください。

学校の制服、ランドセル、あるいはラジオ体操、遠足、修学旅行などなど、日本では、みんなと同じものを持ち、みんなと同じ行動をすることが、幼いうちから身についていくのです。私たち日本人にとっては当たり前のことですよね。

というわけで、みんなと同じ物を所有することが当たり前と考える、私たち日本人の考え方も、ピアノは黒いものという常識をつくりだしてしまった、大きな理由といえるでしょう。

ピアノショップに勤務していたころ、来店されたお客様(親)が、木目にしようか黒にしようかと迷って、お子さんに「どれがいい?」と問いかけます。

すると、たいていのお子さんが、「黒がいい!」の一言。これで黒に決まりです。

こうして日本では、どんどん黒いピアノが広まっていくのです。

【国外では】

モーツァルトやベートーベン、ショパンなど、有名な作曲家に愛用されたピアノが、今でも大切に保存されていますが、ほとんどが黒ではなく木目仕上げ、あるいは美しい装飾が施されていたりするものばかりです。

そう、ヨーロッパでは、ピアノは木の楽器という考え方が受け継がれているのです。だからバイオリンやチェロなどと同じように、黒い塗装を施すことなどしなかったのだと思います。

だから今でも、ヨーロッパでは木目ピアノが主流…と思っていたら、最近聞いた話では、ヨーロッパでも黒塗りが増えているとのこと。そうなんだあ。

【コンサート用のピアノは黒が主流】

コンサートホールで使用されるのは、ピアノの中でもいちばん大きいサイズのピアノで、フルコンサートグランドと呼ばれます。これは流石に世界中で黒塗りが主流です。

この理由は、演奏会の主役はピアノではなくあくまでも演奏家ですから、彼ら(彼女ら)を引き立たせるために、ピアノは控えめな黒塗りということなのです。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

【著書】
ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
ピアノと日本人 (2013年 DU BOOKS)  

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アップライトピアノとグランドピアノの違いは?

これらのピアノの違いをお話しする前に、まずピアノが生まれた経緯からお話を始めます。
皆様は「チェンバロ(ハープシコード)」という楽器をご存知でしょうか。

この楽器は弦を“爪で弾(はじ)いて”発音するのですが、それに対して、「ピアノ」は弦を“叩いて”発音させます。

バッハ(1685年~1750年)が活躍していた頃は、鍵盤楽器はチェンバロが主流でしたが、弦を弾く爪(プレクトラムという)は長さが1cmにも満たないもので、幅もせいぜい2mmほど。
鍵盤を押すとこの爪が弦を弾いて音を発生させるわけですが、強い音を出そうとして鍵盤を強く押しても、出てくる音は強くはなりません。

そう・・・チェンバロは音の強弱が出せない楽器なのです。
この強弱の出せない欠点を何とか解決したいと発明されたのが、現代の「ピアノ」の始まりです。

弦を“弾(はじ)く”のではなく”叩く”方式に構造を変えたのです。「クラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」…これが今から300年ほど前に発明されたピアノの名称です。

「ピアノ」と「フォルテ」が出せるチェンバロ、つまり弱い音と強い音を出すことのできるチェンバロという意味です。
この名称の「ピアノ」の部分だけを残して、現代の「ピアノ」という名前へ引き継がれていったのです。

チェンバロ

写真をご覧いただいてもご理解いただける通り、チェンバロはグランドピアノと形がよく似ています。

つまり、グランドピアノが本来の「ピアノ」なのです。チェンバロに工夫をこらして出来上がったのが「ピアノ」ですから、当然ですよね。

アップライトピアノが発明されたのは1800年頃のことで、最初のピアノ(グランドピアノ)の発明からおよそ100年後です。狭い場所に置ける、また馬車に積んで運ぶのに便利、などの目的で発明されたのではないでしょうか。

では、本題に入りましょう。
「アップライトピアノとグランドピアノの違い」ですが、この二つの楽器は、表現力においても機能においても、大きな差があります。
その違いを説明するのに例え話をしましょう。

いや、その前に、なぜアップライトピアノの発明が100年も後になったのでしょうか。その答えは簡単、「不自然だから」です。

何が不自然かといいますと、弦を横(水平)方向に張って、それを下から叩く構造のグランドピアノに対して、アップライトでは弦を縦(垂直)方向に張って、それを横方向から叩きます。

弦を叩く部品を「ハンマー」と呼びますが、弦を打ったハンマーは、グランドピアノでは自重で元の所に戻り(下がり)、すぐに次の動作に移ることができます。

ところがアップライトピアノでは、そうはいきません。弦を打ったハンマーは反動に加えてスプリングやヒモを使って元の所に引っ張り戻すのです。ねっ、不自然でしょ。

さあ、例え話です。

『グランドピアノは犬や猫、鹿、ライオンなどのような四足歩行の動物。アップライトピアノは二足歩行の人間。』

四足であった動物が腰を中心にして立ち上がったのが、二足歩行の人間ですね。
四足と二足とでどちらが機敏に動けるかといえば、四足に軍配が上がります。

これと同じで、アップライトピアノは敏捷性に欠けるのです。

四足のグランドピアノを腰を中心にして立たせたのが二足のアップライトピアノとお考えいただければ、ご理解いただけると思います。そう、腰がギクシャクするのです。

例えば、タタッと可能な限り素早く、鍵盤の動きを出来るだけ小さく鍵盤をたたいてみて下さい。
アップライトピアノではなかなか上手くいきませんが、グランドピアノではいとも簡単。

これがピアノを立ててしまったための弊害で、弦を打つメカニズムも大分変わりました。

「トリル」といって一つの鍵盤を速く打鍵して発音させる奏法があります。グランドピアノでは1秒間に15回ほどの打鍵が可能ですが、アップライトピアノではその半分が限界です。

だからこそ演奏が上達すればグランドピアノを、ということなのです。

さらにもう一つ、大きな差があります。これも例え話にします。

『アップライトピアノは鉄砲玉。グランドピアノは遠隔操作のできるミサイル。』

えっ、何のこと? と思うでしょ。鉄砲玉は、撃った瞬間に進む方向が決まってしまいますが、遠隔操作のできるミサイルでは、撃ち出した後でも進む方向を変化させることができます。

アップライトピアノでは、指が鍵盤に触れた瞬間に、既に出てくる音の大きさや音色が決まってしまいます。

一方、グランドピアノでは、指が鍵盤に触れた後より底に至るまでの間の力の入れ具合などにより、出てくる音の大きさや音色を変化させることが出来るのです。

では、どうしてアップライトピアノとグランドピアノとで、これ程の能力の違いが生ずるのでしょう。
これを、分かりやすく説明するのは、たいへん難しい!

えーと、あっ、そうだ!アップライトピアノでは、鍵盤に指が触れた瞬間に、まるで蹴飛ばされたボールのようにハンマーが勝手に飛んでいくのです。グランドピアノは、そうそう、ボーリングのボールのようかな。

ボールを持って腕を振りはじめた後でも、進む方向や曲がる方向、スピードも自在に変えることができますね。
これで両者の違いが、何となくご理解いただけたのではないでしょうか。

最後に、音量のバランスについてお話しましょう。実は、アップライトピアノは形や構造が原因で、もともと低音側の音量が大きく高音側の音量が小さいのです。

一方、グランドピアノの音量は、低音から高音までバランスが良く均一です。しかも、弾き方によって自由に音量のコントロールができますから、表現の幅も大きくアップします。

まだまだ色々な違いがあるのですが、話がもっと長くなりそうですので、今回はこれで終わりにしたいと思います

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

【著書】
ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
ピアノと日本人 (2013年 DU BOOKS)  

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中古ピアノと新品ピアノの違いは?

「中古ピアノって、誰が使っていたかわからないし、第一キタナイ感じがする・・・」

これが今から30~40年前の中古ピアノに対する、ごく一般的な認識でした。

でも今では、こんなイメージを持つ方はすっかりいなくなりました。
新品ピアノと見違えるほど、販売店の中古ピアノの整備技術が上がったからでしょう。

さて、本題に入ります。

中古ピアノと新品ピアノは何がどう違うのか。お話したいことは山ほどありますが、ポイントをズバリお伝えしましょう。

ピアノに限らず、弦楽器、管楽器などすべての楽器には、人の声帯に当てはまるものがあります。
人でいえば、施す訓練によってオペラを歌う声帯にもなり、浪曲をうなる声帯にもなります。楽器でもまさにこれと同じで、どのように演奏されてきたかによって音色が大きく変わってきます。

ゾクゾクするような何とも言えない素晴らしい響きのもの、美しく響く音のもの、ギャンギャンとわめくような音のもの、鳴らないもの等々。
年数が経過したピアノは、たとえ同じメーカーの同じ機種であっても、音の出方が大きく変わってくるものです。

というわけで、中古ピアノは音の良し悪しを基準に選ぶのが良いでしょう。

一方、新品ピアノは声帯が全く訓練されていないですから、弾く人がこれから自分の好みの音に仕上げていくことができます。
つまり中古と新品のどちらが良いのかではなく、これから買おうとする人が楽器に何を求めるか、が大事です。

これからどんどん弾いて、自分好みのピアノに仕上げようとするならば新品ピアノを、既に育っている良い音のピアノを求めようとするなら中古ピアノを。
でも、いい音のするピアノといっても分からないと思う方が多いはず。

信頼のおける調律師さんやピアノの先生に選んでもらうのが一番の方法ですが、それができない方ならば、お店の人に弾いてもらいましょう。

できるかぎり、たくさんのピアノを弾いてもらい、ピアノの音を聴きましょう。そうして比較してみると、案外違いがわかるものです。

ピアノの音の違いがまったく分からないとおっしゃっていた方が、実際にいろんなピアノの音を聴き比べて「こんなに違うのか」と驚かれたことを、何度も経験しています。

国産ピアノと輸入ピアノとの違いを、ビックリするほど聞き分けた方が多いことも経験しています。ですから、ご自分の耳に自信をお持ちになって聴いてみてください。

ネットで得た情報や店員からのコメントなどは置いておき、まずはじっくりピアノの音を聴いてみることです。音を聴いて気になるピアノがあれば、その後にお店のスタッフの方に説明してもらいましょう。

いくら名画だといわれても嫌なものは嫌、好きなものは好き。そういう態度でピアノ選びをしていいと思います。こう考えてみてください。

自分と気が合う人とは、ずっと話していても苦にはなりませんよね。でもいやだなと思う人とは、一時も早く話を終らせたい。

弾く人とピアノとの関係もまさにこれと同じで、嫌な音のピアノは弾いていても楽しくありません。大好きな音の出るピアノなら、時間を忘れてずっと弾いていたいものです。

ぜひ、このような感じでピアノを選んでみてください。新品か中古かはあまり気にせずに、好きな音のピアノを探してください。

そうして見つけたピアノは、弾くのが楽しくなりますから。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

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ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
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輸入ピアノと国産ピアノの違いは?

ひと口に「輸入ピアノ」といっても、伝統的な欧米メーカーのピアノもあれば、中国製や韓国製、ロシア製、また国内では全く知られていない数多くのピアノメーカーがあります。
また昨今では日本のピアノメーカーがインドネシア、ベトナムなど東南アジアの工場で製造していますが、これも一種の「輸入ピアノ」と捉えることができます。

ですので、今回は伝統ある欧米の有名メーカーのピアノを「輸入ピアノ」と考えて話を進めていきます

まず、伝統的な欧米の有名メーカーと日本のメーカーのピアノは何が違うのか、
何をもって違いとするのか・・・
分かりやすくお伝えするのは非常に難しく、どこから説明すれば良いのかも大いに迷うところです。

それで、こんな話から入っていきたいと思います。琴や三味線などの日本の伝統的な和楽器を、もしも欧米で作ったら・・・。

どうでしょう。欧米で完成度の高い和楽器が作られたとしても、私たち日本人は抵抗無く使うでしょうか。とりわけその道のプロ、演奏家達が使うでしょうか。

おそらく使わないでしょう。その理由は、何となくわかるような気がしませんか?
やはり日本古来の音楽は日本で作られた楽器でないと表現できないのでは・・・そんな風に考えるのではと思います。このことをピアノに当てはめてみれば、私のお伝えしたい事はご理解いただけるでしょう。

日本のピアノがいくら頑張っても、欧米のピアノにはなれない

2008年にウィーン(オーストリア)の銘器「ベーゼンドルファー(Bosendorfer)」がヤマハによって買収されたとき、『ベーゼンドルファーがベーゼンドルファーじゃなくなっちゃう』と、ウィーンの音楽家達が猛反対をしました。ヤマハ=日本人にウィーンの歴史や伝統、文化を理解できる訳が無いと・・・。

私自身も十数年前にウィーンを訪れたことがありますが、その時に同行した仲間の一人が「この街は時間が止まってる!」と言いました。

そう、“音楽の都”ウィーンでは、時間が非常にゆったりと流れているのです。

ウィーンの人々は幸せを感じながら日々生活をしており、この街で生まれ中世よりずっと愛され続けてきた“ウィーンの誇り”ともいえるベーゼンドルファーを、時間に追われる毎日を過ごす日本人による買収に猛反対するのも、当然といえば当然でしょう。

ドイツのピアノ工場を視察したときにも同じようなことを経験しました。訪問したのは5月のことでしたが、工場は朝の6時に始まり午後3時には終わるのです。この季節の日没は夜の8時頃ですから、人々は仕事を終えてからの約半日をゆったりと過ごすことが出来るのです。

ヨーロッパのピアノは、こうしたゆったりとした生活環境の下で造られています。
ですのでピアノ造りにも充分な時間がかけられ、それが質の高い響きとなって現れてくるのです。

日本のピアノとの違いは、こうした余裕から生まれてくるのではないかと感じることができます。

イタリアでも活躍されたオペラ歌手、高丈二(こう じょうじ)さんが、かつてテレビで「いくら頑張っても日本人はイタリア人にはなれない」と言っていたのをはっきりと覚えています。
また戦後の日本の音楽界を演奏者・教育者としてリードしたピアニスト、園田高弘(そのだ たかひろ)さんも、「いくらドイツ音楽に傾倒してもドイツ人にはなれない」と言っていました。

つまり、日本のピアノがいくら頑張っても、欧米のピアノにはなれないということです。

生活環境も、歴史も伝統も、人種も宗教も全く違いますし、気候風土も違いますから、日本では欧米と同じようなピアノが造れるはずはありません。

もう一つ、大きな違いをお話ししましょう。

ピアノの個性についてです。欧米のピアノには強烈な個性がありますが、日本のピアノは没個性的です。
なぜ没個性的かというと、日本のピアノが大量生産、大量販売を目指しており、明確な個性を持たせてしまうと不特定多数の人に買ってもらえなくなるからです。

誰もが及第点をつけてくれないと買ってくれる人が限られてしまうため、強烈な個性は避けられるという訳です。対して伝統的な欧米メーカーのピアノは「個性を認めてくれる人だけが買ってくれれば良い」といった考え方が底流にあるように、私には思えます。

例えばフランスの名門メーカー「プレイエル」はショパンが愛用したピアノとして有名ですが、明るく力強い音色が特徴で、それがこのピアノの個性となっています。

ショパンの祖国ポーランドは、彼が国を出た後に外国からの侵略で消滅してしまいますが、この悲壮で病弱な彼を支えたのがプレイエルだったような気がしてなりません。
暗い心を勇気付けてくれるようなプレイエルの明るい音色。明るい太陽の下では影もくっきりとしますが、それと同じようにプレイエルの音色は、ただ明るいだけではなく暗い影の部分も表現できる。

それがショパンがプレイエルを愛奏した最大の理由だったと、私は感じます。
ドビュッシーは、「すべてのピアノ音楽はベヒシュタイン(ドイツ)の為だけに書かれるべきだ」と言っています。

“高貴な音のピアノ”といわれるように、ベヒシュタインの音はクリアで気品があります。ペダルを踏み続けてずっと音を重ねても、それぞれの音が明確に聞き分けられます。
ドビュッシーがこのピアノを愛した理由は、ベヒシュタインに触れてみるとご理解いただけるでしょう。

しかし、プレイエルのタッチは抵抗感があり、初心者には重いかもしれません。

音色も明るく力強いので、良くないと思う方もいらっしゃるでしょう。ベヒシュタインの音はクリアですが、繊細過ぎてミスが目立ってしまうと嫌う方もいます。このように強烈な個性には両面性があります。それを無難に避けたのが日本のピアノというわけです。

今回輸入ピアノの例に挙げたのはプレイエルとベヒシュタインの2つだけですが、他のメーカーもほとんどが個性的です。それは欧米の人々の、個性を尊重する生き方が影響しています。

このあたりの感覚は、「みんなと一緒がいい」という私たち日本人とは大きく違うところです。
何はともあれ、日本のピアノだけでなく、輸入ピアノにも出来るだけ多く触れてみて下さい。

そのピアノの持つ個性と皆さんの個性が一致するピアノが必ず見つかります。
気の合う人とは、いくらでも話しが弾みますよね。
ピアノも同じで、気の合うピアノに出会えればずっと弾いていたくなるものですよ。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

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ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

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「世界三大ピアノ」のそれぞれの違いは?

スタインウェイ&サンズ(STEINWAY&SONS)、ベーゼンドルファー(Bosendorfer)、ベヒシュタイン(C.BECHSTEIN)・・・

この3つのピアノブランドは「世界三大ピアノ」といわれています。

スタインウェイはニューヨーク(アメリカ)、ベーゼンドルファーはウィーン(オーストリア)、ベヒシュタインはベルリン(ドイツ)で創業されており、大きく分ければ、スタインウェイはアメリカ生まれであとの2つはヨーロッパ生まれということになります。

では、それぞれの特徴を説明していきます。

前回のコラムでもお伝えしましたが、かつてウィーンを訪れた際、同行した一人が「時間が止まってる」と言いました。まさにその言葉通りウィーンでは時間はゆったりと流れています。

忙しく時間が流れる日本では想像すら難しいと思いますが、ウィーンの人々はゆったりと日々を暮らし、音楽を楽しんでいます。そんなウィーンで生まれたピアノですから、せわしない気持ちで弾いても決して良い音を奏でることはできません。

心を落ち着けてゆったりした気持ちで向かい合うと、得も言われぬ美しい響きを奏でてくれる・・・

それがベーゼンドルファーです。

次に、ベヒシュタインは1853年にベルリンで生まれた名器です。ドビュッシーは、「ピアノ音楽はベヒシュタインのためにだけに書かれるべきだ」とベヒシュタインのピアノを絶賛し、ベヒシュタインはドビュッシーが作曲や演奏する上で無くてはならない存在でした。

このピアノの音色は純粋で混じり気がなく、色彩豊かで無限の表現力を持っています。

マネ、ルノワール、セザンヌなどの印象派の画家たちは見たものの印象をそのまま表現しようとしましたが、同じく印象派の音楽家であるドビュッシーも聞いたものの印象をそのまま表現しようとしました。

そのためになくてはならないピアノがベヒシュタインだったのです。

ベヒシュタインは、私には極めて切れ味の良い包丁のように思えます。うっかりすると怪我をしてしまいますが、上手に使えば他とは比べられない素晴らしい料理(音楽)を作り出すことができます。

一方、スタインウェイは世界中の有名なコンサートホールや録音スタジオで最も多く使われ、世界中の演奏家に最も信頼されているピアノです。

ベヒシュタインが創業した同じ年の1853年にニューヨークで創業されました。創業者(ハインリッヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェーク)はもともとドイツ出身のピアノ製作家ですが、ヨーロッパの伝統的なピアノづくりをもとにニューヨークで革命的ともいえる進化を施しました。

ヨーロッパのピアノには無かった、強靭さと力強さを持たせたのです。

歴史と伝統を重んじるヨーロッパでは、ピアノづくりは木材にこだわり金属を多用しないことが半ば常識になっていました。ところがスタインウェイは、新天地アメリカだからこそできたことですが、積極的に金属を使うことでそれまでに無いパワフルで強いピアノを作り上げたのです。

アメリカで成功を手にしたスタインウェイは、1880年にはドイツのハンブルグに工場を増設しヨーロッパでもピアノを積極的に販売するようになりますが、ヨーロッパの音楽家達は今までにないパワフルなピアノの出現に熱狂します。

こうしてスタインウェイは、現在に至るまで世界のピアノづくりをリードする地位を確立していったのです。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

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理想のピアノとは?

今回もまた難しいテーマです。
理想とは人それぞれ異なるはずですから、あくまで“私の理想のピアノ”として話を進ていきたいと思います。

それでまず、こんなエピソードを紹介します。今から30年ほど前、あるお宅に調律にお伺いし、終わった後の奥様との会話です。

「娘はもうピアノレッスンはやめて会社勤めをしていますが、今も帰宅後にピアノに向かうことがあるんです。それで娘の弾くピアノを聞いていると、会社で嫌なことがあったんだなとか、楽しいことがあったんだなとかが分かるんです。」

「そうですか、娘さんはピアノに向かって話しかけているんでしょうね。」

「そうなんです。ピアノに訴えかけているように思えてならないんです。今になって、娘にピアノを習わせていた意味がやっと分かったような気がするんです。」

私が理想と考えているピアノの姿が、このエピソードにあります。つまり、弾き手の楽しみや悲しみ、苦しみなどの感情に的確に応えてくれる、言うなれば、何でも話せて、親身になって相談に乗ってくれる親友みたいなもの。

それが私の理想のピアノです。

もしも、このピアノの音色が美しくなかったとしたらどうでしょう。悲しみを訴えればダミ声で応え、楽しさを訴えれば伸びのないこもった音で応える。

これでは、感情を訴えることなんて出来ませんよね。自分と本当に相性の良いピアノに出会うと、ずっと弾いていたくなるものですし、苦しいはずの練習も楽しくなります。それが理想のピアノだと、私は思います。

では、理想のピアノに出会うにはどうしたら良いでしょう。それには、できる限りたくさんのピアノを弾いてみることです。国産のピアノだけにこだわらず、輸入ピアノにもたくさん触れてみてください。うまく弾けなくてもいいです。

ずっと弾いていても楽しいと感じるピアノ、それがあなたの理想のピアノです。それはあたかも、心許せる本当の親友に出会ったような感覚です。

一生付き合う伴侶かもしれません。一緒に過ごしても全く苦にならず、話がどんどん盛り上がる。そんなピアノを是非とも探してみてください。

それともう一つ、理想のピアノというわけではありませんが、鍵盤が小さくて軽く、音量も小さなピアノ。

たとえばモーツァルトの時代のピアノは、現代のピアノとは比べものにならないくらい音量も小さく、鍵盤も浅く軽いものでした。だからハノンを弾いて指を強化する必要などありませんでした。

現代だからこそ、そんなピアノが必要だと思うのです。とにかく現代のピアノは鍵盤も重く、音量も大き過ぎると思います。そういうピアノはコンクールでの入賞を目指す方にとっては良いかも知れませんが、特に趣味で楽しむ方には不向きです。

私の理想ともいえる、そんなコンパクトで鍵盤も軽く、音量も小さなピアノ・・・どこかのメーカーが造ってくれないかなぁ、と思っています。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

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最高峰のピアノとは?

シリーズでお届けしてきました「ピアノなんでもコラム」も、いよいよ最後のテーマになります。

今回もまたまた難しいテーマ、「最高峰のピアノとは」という内容です。

人によって最高と感じるピアノはさまざまで、“音楽の都”ウィーンのベーゼンドルファーが最高峰とおっしゃる人もあれば、ベルリンのベヒシュタインが最高峰だと主張される方、また世界で一番たくさん使われているヤマハが最高峰と思っていらっしゃる方もあるでしょう。

やっぱり世界の有名アーティストがいちばん演奏しているスタインウェイのピアノが最高のピアノと考えるのも、妥当かも知れません。

では一体、「最高峰のピアノ」とは何でしょう。人それぞれ最高と思うものは異なりますが、あるデータより結論を出していきたいと思います。

手元にパリ・コンセルバトワール(パリ国立高等音楽院)に設置されているピアノのリストがあります。

データが最新のものではなく20年程前のものですが、コンセルバトワール世界で最も歴史と伝統のある高等音楽教育機関であり、そこにどんなピアノがあるのかが最高峰のピアノを知る大きなヒントになります。

次の通り、アルファベット順にブランド名と台数を列挙します。台数はグランドピアノとアップライトピアノを合わせた数です。

Bechstein(ベヒシュタイン) 7台
Bluthner(ブリュートナー) 4台
Bosendorfer(ベーゼンドルファー) 8台
Boston(ボストン) 1台
Erard(エラール) 3台
Euterpe(オイテルペ) 6台
Fazioli(ファツィオリ) 6台
Feurich(フォイリッヒ) 10台
Grotrian(グロトリアン) 20台
Hoffmann(ホフマン) 13台
Ibach(イバッハ) 3台
Kawai(カワイ) 20台
Pleyel(プレイエル) 1台
Pfeiffer(ファイファー) 5台
Rameau(ラモー) 40台
Sauter(ザウター) 17台
Schiedmayer(シードマイヤー) 1台
Schimmel(シンメル) 5台
Seiler(ザイラー) 11台
Steingraber(シュタイングレーバー) 3台
Steinway&Sons(スタインウェイ・アンド・サンズ) 24台
Thumer(テュルマー) 6台
Yamaha(ヤマハ) 23台

ご覧の通り、最も多かったピアノは自国フランス・Rameau(ラモー)の40台です。

これはフランスのPleyel(プレイエル)社で造られていたピアノですが、本家のプレイエルの台数が少ないのは、ラモーの方が安価だからです。

次に多いのはSteinway&Sons(スタインウェイ・アンド・サンズ)の24台で、全てグランドピアノです。Rameau(ラモー)は40台のうちグランドは9台しかありません。3番目はYamaha(ヤマハ)で23台で、内訳はグランドが18台、アップライトが5台です。

その次はGrotrian(グロトリアン)とKawai(カワイ)が各20台で、うちグランドは19台と16台です。

次はSauter(ザウター)の17台で、うちグランドが9台です。

数は多くはありませんが、Fazioli(ファツィオリ)の6台(全てグランド)は驚異的です。

なぜかといえば、イタリアで1980年に創業した極めて新しいメーカーだからです。

さて、専門家の使うピアノはグランドピアノであり、使用されるグランドの台数トップは24台が使用されているスタインウェイ&サンズです。

ですので、コンセルバトワールではスタインウェイピアノをグランドピアノの最高峰と考えているように推察されます。

一方、日本の音楽大学に設置されているピアノはというと、やはり圧倒的にヤマハが多く、2番目はカワイのようです。

ただし教授のレッスン室はスタインウェイピアノというのが常識になっています。

それと国内の有名コンサートホールでも演奏されるピアノは圧倒的にスタインウェイピアノが主流となっています。

やはりスタインウェイのピアノが最高峰といえるかもしれませんね。

ピアノ調整のプロフェッショナルである調律師の立場でも、スタインウェイに軍配を上げる場合が多いようです。

なにしろスタインウェイのピアノは、世界中のコンサートホールや録音スタジオの分野では90パーセント以上ものシェアを占めていますし、結論としてはスタインウェイ&サンズのピアノを「最高峰のピアノ」とするべきでしょう。

かつてピアニストの内田光子さんは、「ここぞというときにスタインウェイは信頼感が高い」とおっしゃっていました。

そう、このピアノはどんな過酷な演奏にも悲鳴を上げる事はありません。

パワフルなレーシングカーのような高い能力を備えているのです。アクセルを踏み込めば限りなくスピードが上がっていく。

そんな印象をスタインウェイには感じます。

だからこそプロの演奏家や調律師から圧倒的な支持を得ているのだと思います。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

【著書】
ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
ピアノと日本人 (2013年 DU BOOKS)  

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「ピアノはなぜ黒いのか」の著書でお馴染みのスーパーピアノアドバイザー斉藤信哉さんによる連載コラムをお届けいたします。
※旧サイトの「ピアノなんでもコラム」をブログ形式で再掲しています。

ピアノと電子ピアノの違いは?

国内の新品ピアノ販売台数がピークを迎えたのは、昭和55年(1980年)のことで、台数は年間30万台を超えていました。

ところが、その年を境に年々約10%づつ下がり続け、現在では約1万6千台にまで下がっています。
販売台数が下がり始めた同じ時期に、重い・音が大きい・価格が高いというピアノの欠点をクリアした画期的な商品としてヤマハが市場に送り込んだのが、電子ピアノ「クラビノーバ」でした。

発売当初、ヤマハはピアノとは一線を画するためか、TVコマーシャルに俳優の林隆三さんを起用し、あくまでも趣味路線を強調していました。
ところがその後、1985年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したスタニスラフ・ブーニンをコマーシャルに起用することにより、状況は一転しました。

NHKの特集番組でブーニンが「100年に一人の逸材」などと報じたこともきっかけとなり、日本では「ブーニン・フィーバー」といわれる現象を巻き起こしました。
その彼をヤマハはクラビノーバのTVコマーシャルに起用したのですから、電子ピアノに対する市場の受け取り方は大きく変わりました。

「電子ピアノは、ピアノの代用になる」。このイメージを、しっかりと市場に植えつけてしまったのです。

これをきっかけに、それまではピアノづくりにはまったく無縁であったローランドやカシオ、パナソニックなどの電子楽器メーカー・電気製品メーカーまでが次々に電子ピアノ市場に参入し、今では「電子ピアノ=ピアノの代用品」としての地位を築き上げ、販売台数ではピアノをはるかに凌いでいます。

では、電子ピアノは本当にピアノの代用になるのでしょうか?本当のところ、何がどう違うのでしょう?

電子ピアノ=『毛筆を習いに行って、家ではマジックで練習するようなもの』

電子ピアノが普及し始めたころ、あるピアノの先生から、「楽器店は、なぜあんなもの(電子ピアノ)を売るのですか?」と、きつく抗議されたことがあります。

そこで、先生に質問してみました。「では先生は、ピアノと電子ピアノとの違いを、どのようにお弟子さんに説明されているのでしょうか?」

「それは表現力がまったく違うと説明するのですが…」
ですが…と、先生は言葉の最後を曇らせていました。お弟子さんに説明しても伝わらないことに苛立っていたのです。

「表現力」という言葉。これではあまりにも抽象的でお弟子さんには伝わらないし、ましてピアノを習ったことのないご両親であれば、ますます伝わらないはずです。

そこで考えてみました。電子ピアノ=『毛筆を習いに行って、家ではマジックで練習するようなもの』

筆ならば、力の入れ具合で、太くも細くも、濃くも薄くも、力強くも繊細にも、さまざまな字を書くことができますし、上手、下手の差が明白に出ますね。でもマジックでは細かな表現はできませんが、誰もが簡単に同じ太さの字を書くことができます。筆との違いは誰でも理解できますよね。

ところが、ピアノと電子ピアノとでは、とりわけピアノを弾かない人にとっては、音で判断するしかありません。

聞いてみても、印象では両者で音はあまり変わらない。ならば安くて手軽な電子ピアノでいいじゃないか、と、なるわけです。 文字や絵画と違い、音は目で見えませんから、ここが問題なのですね。

見えないものを説明するのには、例え話がいちばんだと思いますので、最近ではこのようにも説明しています。
電子ピアノ=『生花を習って、家では造花で練習するようなもの』

これだと更に理解しやすいのではないでしょうか。生の花は、水切りをしたり、花びらが落ちたりしないように優しく扱いますよね。 その生きている花を扱う過程に、生花の真髄がある気がします。

ところが造花だと、水切りなどという花を生かし続ける努力など一切無用。少々乱暴に扱っても壊れることはありませんから、ただ形を整えることだけが目的になってしまうはず。

もちろん、そこからは花を優しく扱う心は芽生えるはずはありません。

電子ピアノでは音色の表現は難しく、音の強弱しか再現できない

電子ピアノで練習しつづけている人が生ピアノで奏でる音楽は、私には造花の生花と重なっているような気がしてなりません。

音もタッチ(弾き方)も乱暴に感じるのです。
なぜ音もタッチも乱暴になるのかというと、電子ピアノでは、少々乱暴な弾き方をしてもきちんとピアノの音が出てくるからです。

電子ピアノの音は、ピアノの美しい音だけを録音(サンプリング)して再生しているからです。
生ピアノでは、同じピアノを弾いても弾き手によって出てくる音色が違います(だから面白いのですが)。

電子ピアノでは、それほど違いは出ません。
極端な言い方をすれば、電子ピアノでは音色の表現は難しく、音の強弱しか再現できないのです。

日進月歩で電子ピアノも進化していますが、あくまで造花は造花、生の花にはなれないように、電子ピアノが生ピアノと同じになれるはずはありません。

とはいっても、今では電子ピアノを使う人が多いのも事実です。
やむを得ず電子ピアノで練習される方は、これまでお話ししてきたことを念頭に、なるべく生ピアノを弾く機会を多くしてくださいね。

最後に、あるエピソードで話を終わりましょう。
もう随分前になりますが、ずっと調律に伺っていたお客様からこんなことを言われたことがあります。

「小さいころから娘にピアノを習わせて、今では社会人になりましたが、娘がたまに弾く音を聞いて、やっとピアノを弾く意味がわかりました。
ピアノの音を聞くと、何か会社で嫌な事があったんだなとわかるんです。

落ち込んでいる気持ちを、まるでピアノに訴えているように聞こえるんですよ。楽しいことがあったときも、やっぱりそれなりに音に出ますね。

今になって、娘にピアノを習わせてよかったと思っています。」

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

【著書】
ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
ピアノと日本人 (2013年 DU BOOKS)  

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※旧サイトの「ピアノなんでもコラム」をブログ形式で再掲しています。

ヤマハとカワイの違いは?

ヤマハとカワイの違いをご案内する前に、両メーカーの大きな共通点をお話ししましょう。
それは、共に「均質なピアノを大量に生産できる能力を持っているピアノメーカー」ということです。

ヤマハの創業以来の累計生産台数は約640万台
カワイは約280万台で、ピアノメーカーでは世界第一位と第二位です。

ヤマハより半世紀も前に生産を始めたスタインウェイ&サンズ(アメリカ)は約60万台
ベヒシュタイン(ドイツ)は約20万台。ウィーンの銘器ベーゼンドルファー(オーストリア)にいたっては1828年の創業以来、たったの5万台程度です。

このように世界三大銘器を生産するメーカーと比べてみると、日本の2大メーカーがいかに大量のピアノを生産してきたかがご理解いただけると思います。

では、ヨーロッパのピアノメーカーはなぜ生産台数が少ないのかというと、そもそも「大量に生産することを目指していない」からなのです。追求しているのはあくまでも音の良さであり、例えてみれば、あくまでも味の追求を第一とする一流レストランのような方向性です。

一方、ヤマハやカワイはファミリーレストランに近い方向性といえるでしょう。誰もがなかなか納得する味と、それをどこの店でも均質に低価格で供給できることを目指しています。

では、同じように大量生産を目指すヤマハとカワイとでは、何が違うのでしょう。
まずは音についてですが、これは個々の好き嫌いの問題なので、あえて言及することは控えます。ファミリーレストランでもガストの味とサイゼリアの味のどっちが好きかは、それこそ個々に違いますよね。

これと同じようなものと考えて下さい。
構造やメカニズムの点でもさほど大きな違いはありませんが、弾いたときの感触や音色はやや異なります。どちらを良しとするかは演奏する方の好みですから、どうぞご自分で確かめていただきたいと思います。

次に、両メーカーの違いを知っていただくために、簡単にその歴史についてお話ししましょう。

ヤマハの創業者は山葉寅楠(やまは とらくす)、カワイの創業者は河合小市(かわい こいち)ですが、それぞれ創業者の名字をカタカナ表記してその社名としました。

ヤマハの創業は1887年(明治20年)とされており、この年、浜松の小学校にあったアメリカ製のオルガンが壊れ、これを山葉寅楠が試行錯誤の末に修理したのをきっかけに、後に国産初のオルガンを製作しました。

そして1900年には国産初のピアノの製造に成功しています。
その後、1960年代の急速な経済成長で、ピアノの需要は大幅に増えました。時代が要求するピアノの台数を供給するには、従来の手造りに頼った生産方式では対応できません。

そこでヤマハがいち早く取り入れたのが、世界初のピアノの大量生産方式だったのです。

一方、河合小市は山葉寅楠のもとでピアノ製造や調律を学び、アクション部長などを務めましたが、1926年の労働争議をきっかけにヤマハを離れ、翌1927年(昭和2年)に河合楽器研究所を創立しました。
1951年には株式会社に改組し、ヤマハの後を追うようにカワイも量産体制を整え、ヤマハを猛追します。

消費者にとっての大量生産品のメリットは、均質な商品を低価格で購入できることです。高度経済成長のもとでピアノは飛ぶように売れ、日本のピアノ普及率は世界でも類を見ないほどにまで伸びていきます。

こうしたヤマハとカワイの熾烈な競争の一方、浜松をはじめ全国にあった小規模のピアノメーカーは次々に撤退していきました。その数はおそらく300社に及ぶと言われています。
言うなれば、大型スーパーマーケットやショッピングモールの進出で、個人商店が次々に閉店していく、そんな例えが適当かも知れません。

さて、こうして国内で圧倒的な力をもったヤマハとカワイのピアノは、その後に全世界に向けても輸出されていき、不動の人気を確実なものにして、前述の通り現在では生産台数で世界一位、二位の実績を誇っています。

ヤマハとカワイの違いについては個人的な見解はあるのですが、あまり踏み込んでしまうとさまざまな支障やご意見があると予想して、敢えて差し控えさせていただきました。
最後に、誤解のないように一つだけ付け加えておきます。

両社を大量生産のメーカーだと強調しましたが、コンサートグランドピアノ、あるいはそれに類するフラッグシップモデルでは伝統的な手造り方式で製造し、あくまでも音の良さを追求していますよ。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
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