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2026.01.22

再掲コラム7_最高峰のピアノとは?

「ピアノはなぜ黒いのか」の著書でお馴染みのスーパーピアノアドバイザー斉藤信哉さんによる連載コラムをお届けいたします。
※旧サイトの「ピアノなんでもコラム」をブログ形式で再掲しています。

最高峰のピアノとは?

シリーズでお届けしてきました「ピアノなんでもコラム」も、いよいよ最後のテーマになります。

今回もまたまた難しいテーマ、「最高峰のピアノとは」という内容です。

人によって最高と感じるピアノはさまざまで、“音楽の都”ウィーンのベーゼンドルファーが最高峰とおっしゃる人もあれば、ベルリンのベヒシュタインが最高峰だと主張される方、また世界で一番たくさん使われているヤマハが最高峰と思っていらっしゃる方もあるでしょう。

やっぱり世界の有名アーティストがいちばん演奏しているスタインウェイのピアノが最高のピアノと考えるのも、妥当かも知れません。

では一体、「最高峰のピアノ」とは何でしょう。人それぞれ最高と思うものは異なりますが、あるデータより結論を出していきたいと思います。

手元にパリ・コンセルバトワール(パリ国立高等音楽院)に設置されているピアノのリストがあります。

データが最新のものではなく20年程前のものですが、コンセルバトワール世界で最も歴史と伝統のある高等音楽教育機関であり、そこにどんなピアノがあるのかが最高峰のピアノを知る大きなヒントになります。

次の通り、アルファベット順にブランド名と台数を列挙します。台数はグランドピアノとアップライトピアノを合わせた数です。

Bechstein(ベヒシュタイン) 7台
Bluthner(ブリュートナー) 4台
Bosendorfer(ベーゼンドルファー) 8台
Boston(ボストン) 1台
Erard(エラール) 3台
Euterpe(オイテルペ) 6台
Fazioli(ファツィオリ) 6台
Feurich(フォイリッヒ) 10台
Grotrian(グロトリアン) 20台
Hoffmann(ホフマン) 13台
Ibach(イバッハ) 3台
Kawai(カワイ) 20台
Pleyel(プレイエル) 1台
Pfeiffer(ファイファー) 5台
Rameau(ラモー) 40台
Sauter(ザウター) 17台
Schiedmayer(シードマイヤー) 1台
Schimmel(シンメル) 5台
Seiler(ザイラー) 11台
Steingraber(シュタイングレーバー) 3台
Steinway&Sons(スタインウェイ・アンド・サンズ) 24台
Thumer(テュルマー) 6台
Yamaha(ヤマハ) 23台

ご覧の通り、最も多かったピアノは自国フランス・Rameau(ラモー)の40台です。

これはフランスのPleyel(プレイエル)社で造られていたピアノですが、本家のプレイエルの台数が少ないのは、ラモーの方が安価だからです。

次に多いのはSteinway&Sons(スタインウェイ・アンド・サンズ)の24台で、全てグランドピアノです。Rameau(ラモー)は40台のうちグランドは9台しかありません。3番目はYamaha(ヤマハ)で23台で、内訳はグランドが18台、アップライトが5台です。

その次はGrotrian(グロトリアン)とKawai(カワイ)が各20台で、うちグランドは19台と16台です。

次はSauter(ザウター)の17台で、うちグランドが9台です。

数は多くはありませんが、Fazioli(ファツィオリ)の6台(全てグランド)は驚異的です。

なぜかといえば、イタリアで1980年に創業した極めて新しいメーカーだからです。

さて、専門家の使うピアノはグランドピアノであり、使用されるグランドの台数トップは24台が使用されているスタインウェイ&サンズです。

ですので、コンセルバトワールではスタインウェイピアノをグランドピアノの最高峰と考えているように推察されます。

一方、日本の音楽大学に設置されているピアノはというと、やはり圧倒的にヤマハが多く、2番目はカワイのようです。

ただし教授のレッスン室はスタインウェイピアノというのが常識になっています。

それと国内の有名コンサートホールでも演奏されるピアノは圧倒的にスタインウェイピアノが主流となっています。

やはりスタインウェイのピアノが最高峰といえるかもしれませんね。

ピアノ調整のプロフェッショナルである調律師の立場でも、スタインウェイに軍配を上げる場合が多いようです。

なにしろスタインウェイのピアノは、世界中のコンサートホールや録音スタジオの分野では90パーセント以上ものシェアを占めていますし、結論としてはスタインウェイ&サンズのピアノを「最高峰のピアノ」とするべきでしょう。

かつてピアニストの内田光子さんは、「ここぞというときにスタインウェイは信頼感が高い」とおっしゃっていました。

そう、このピアノはどんな過酷な演奏にも悲鳴を上げる事はありません。

パワフルなレーシングカーのような高い能力を備えているのです。アクセルを踏み込めば限りなくスピードが上がっていく。

そんな印象をスタインウェイには感じます。

だからこそプロの演奏家や調律師から圧倒的な支持を得ているのだと思います。

筆者プロフィール


1952年神奈川生まれ。

神奈川大学卒業後、ヤマハの特約楽器店に入社。
調律、営業業務を31年間勤めた後、活動の場を広げるべくフリーランスとなる。

楽器店勤務の最後の10年間は、技術課、防音課、音楽教室などを管理するとともに、
ピアノショールームの店長を兼務し、ヤマハの特約店としてはほとんど前例のないスタインウェイやベーゼンドルファーなどの輸入ピアノの展示、販売を精力的に行う。

現在、ピアノの調律のかたわら、ピアノ分解セミナー、人材育成研修、音楽大学での講座などを行っている。

【著書】
ピアノはなぜ黒いのか (2007年 幻冬舎新書)
ピアノと日本人 (2013年 DU BOOKS)  

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