音楽サロンを持つ事は若い時からの夢であった。それが老境に入った今になって幸運にもやっと実現する事になった。
元々子供の時からヴァイオリンに親しみ、音楽の中でも室内楽が殊に好きなので、小編成の室内楽が可能なサロンにしたかった。
そこには勿論小さなグランドピアノは必須、どのピアノにしようか、しかし迷うことはなかった。
以前から自分のサロンには、出しゃばらず、でも優雅で室内楽に相応しいベーゼンドルファーと決めていた。
ブラームス、ヨハン・シュトラウス、リスト、ブゾーニ、近年ではジャズの大御所オスカー・ピーターソンがこよなく愛したベーゼンドルファー、
その控えめながらもウィーンのハイ・ソサイアティの煌めきを音に具現した希少なピアノ。
そのピアノ探しが始まった。