【グランドギャラリー東京開催】
第2回テクニカルアカデミー 開催レポート
歴史と設計思想から紐解く、それぞれの音と個性
📍 会場
グランドギャラリー東京
🎹 今回のテーマ
世界3大ピアノ
「ベーゼンドルファー」「スタインウェイ」「ベヒシュタイン」の歴史と設計思想

▲ グランドギャラリー東京で開催された第2回テクニカルアカデミー
今回のセミナーポイント
① 世界3大ピアノの歴史的背景と、それぞれが生まれた時代
② ベーゼンドルファー、スタインウェイ、ベヒシュタインの異なる設計思想
③ 実際に同じ空間に並ぶ3台を比較しながら、それぞれの個性を体感
④ 現代ピアノの製造方法につながる「二大潮流」について解説
⑤ キーベッドやアクション調整など、技術者として知っておきたい実務のポイント
第2回テクニカルアカデミーを開催しました
先日、グランドギャラリー東京にて、
「第2回 テクニカルアカデミー」
を開催いたしました。
今回のテーマは、
「世界3大ピアノの歴史と設計思想」
~ベーゼンドルファー・スタインウェイ・ベヒシュタイン、それぞれの個性を紐解く~
世界には数多くの素晴らしいピアノメーカーがありますが、
その中でも長い歴史と独自の設計思想を持つ
ベーゼンドルファー、スタインウェイ、ベヒシュタイン。
今回は、実際に同じ空間に3つのブランドのピアノが並ぶという、
グランドギャラリー東京ならではの環境を活かしながら、
それぞれの歴史、構造、音づくりへの考え方について学びました。
同じ「ピアノ」という楽器でありながら、
なぜメーカーによって音や弾き心地に違いが生まれるのか。
その背景には、それぞれのメーカーが長い年月をかけて積み重ねてきた
歴史と設計思想
があります。
今回のテクニカルアカデミーでは、
単純に「どのピアノが良いのか」を比べるのではなく、
それぞれのメーカーが、どのような理想の楽器を目指してきたのか
という視点から、3大ピアノの魅力を紐解いていきました。
講師紹介

▲ 実際のピアノを前に、歴史や構造について解説する武内調律師
今回講師を務めていただいたのは、
武内 順一 調律師です。
前回の第1回テクニカルアカデミーに引き続き、
ピアノの歴史や構造、そして実際の調律・整備の現場で培われた経験をもとに、
今回も幅広い視点からお話しいただきました。
今回のセミナーでは、
「何となく音が違う」
「このメーカーはこういう音がする」
といった感覚的なイメージだけではなく、
なぜそのような違いが生まれるのかを、歴史や構造から考えること
を大切にしました。
楽器の個性を理解するためには、
目の前にあるピアノだけを見るのではなく、
その楽器が生まれた時代や、
メーカーがどのような理想を追求してきたのかを知ることも重要です。
製造方法から見る「ピアノの二大潮流」
今回のセミナーではまず、
現代のピアノ製造を理解するうえで重要となる
「二つの大きな設計思想」
について解説が行われました。
長いピアノの歴史の中で、
多くのメーカーが独自の進化を遂げてきました。
しかし、その設計や製造方法を紐解いていくと、
ベーゼンドルファーとスタインウェイという
二つの異なる考え方が、現代のピアノ製造に大きな影響を与えていることが分かります。
今回の重要なポイント
同じような製造技術や構造を持つピアノでも、メーカーが目指す音や響き、そして楽器としての個性はそれぞれ異なります。
だからこそ、その背景にある「設計思想」を知ることが、ピアノをより深く理解することにつながります。
「どのような音を目指すのか」
「どのように響きをつくるのか」
「どのような演奏表現を可能にするのか」
メーカーごとの違いを知ることで、
一台一台のピアノを見る視点も、より深く広がっていきます。
① ベーゼンドルファー ~楽器全体を響かせるという考え方~

▲ 独自の設計思想を持つベーゼンドルファー
1828年にウィーンで創業した
ベーゼンドルファー。
今回紹介された大きな特徴の一つが、
「ピアノ全体を響かせる」
という独自の考え方です。
響板だけで音を響かせるのではなく、
ケースや楽器全体の共鳴も大切にすることで、
豊かで深みのある独特の響きを生み出しています。
また、ベーゼンドルファーの歴史を語るうえで欠かせない人物が、
ピアニストのフランツ・リストです。
当時のピアノでは耐えることが難しかったとされる、
リストの激しい演奏。
そのような演奏にも耐えられる強度を持った楽器として、
ベーゼンドルファーはその存在を確立していきました。
さらに、通常の88鍵を超える97鍵を備えた
「インペリアル」
など、現在でも独自の発想を持った楽器づくりを続けています。
ベーゼンドルファーの魅力
楽器全体を豊かに響かせる構造と、ウィーンの伝統を受け継ぐ独特の音色。
他のメーカーとは異なるアプローチで「ピアノの響き」を追求していることが大きな特徴です。
② スタインウェイ ~科学的アプローチが生んだ現代ピアノのスタンダード~

▲ 現代のピアノ製造にも大きな影響を与えたスタインウェイ
1853年にニューヨークで創業した
スタインウェイ&サンズ。
現在のコンサートグランドピアノのスタンダードを築いたメーカーとして、
世界中のピアニストから高い支持を集めています。
スタインウェイの大きな特徴は、
科学的なアプローチを積極的に取り入れた楽器づくり
にあります。
強固な積層リムや鉄骨フレームなど、
より大きな音量と安定した響き、
そして耐久性を実現するためのさまざまな技術が開発されてきました。
その革新的な技術は、
その後の多くのピアノメーカーにも大きな影響を与え、
現代のピアノ製造における一つの大きな基準となっています。
スタインウェイが追求したもの
より大きなホールでも豊かに響き、演奏者の幅広い表現に応える楽器。
そのための研究と技術革新が、現在のスタインウェイの個性につながっています。
③ ベヒシュタイン ~精緻な設計が生み出す透明感のある音~

▲ ベルリンで生まれ、独自の音づくりを追求してきたベヒシュタイン
1853年にベルリンで創業した
ベヒシュタイン。
ベヒシュタインは、
響板を最大限に活かすための精緻な設計を追求してきたメーカーです。
一音一音の輪郭が明瞭で、
透明感のある響きを持つことも大きな魅力です。
同じ「ピアノ」という楽器でありながら、
ベーゼンドルファーやスタインウェイとはまた異なる方向から、
理想の音を追求してきました。
今回のセミナーでは、
実際にそれぞれのピアノを比較することで、
文章や説明だけでは分からない
「楽器そのものが持つ個性」
についても、より深く考えることができました。
ベヒシュタインの魅力
精緻な設計によって生まれる明瞭な音の輪郭と、透明感のある美しい響き。
一つひとつの音を丁寧に表現したい演奏者にとっても、大きな魅力を持つピアノです。
技術者としての実務とメンテナンスの要点
今回のセミナーでは、
3大ブランドの歴史や特徴だけでなく、
実際の調律・調整の現場に役立つ専門的な内容についても解説が行われました。
キーベッドの構造や、
ベディング調整がピアニッシモの表現、
そしてアフタータッチにどのような影響を与えるのか。
実際の構造を確認しながら、
技術者として知っておきたいポイントを学びました。
技術者として大切なのは「基本を徹底すること」
特別な技術だけではなく、一つひとつの作業を丁寧に行うこと。
その積み重ねこそが、ピアノの性能を最大限に引き出すための大切な要素になります。
例えば、
分解時に取り外したネジを無造作に置かず、
元の位置を意識して管理すること。
また、グリスなどについても、
「塗れば良い」というものではなく、
その部品の構造や役割を理解したうえで、
適切に判断することが重要です。
こうした一つひとつの基本的な作業の積み重ねが、
最終的にはピアノの性能や品質、
そしてお客様の満足につながっていきます。
技術者同士の交流とネットワークづくり
セミナー後の質疑応答や情報交換、
そしてその後の懇親会でも、
参加された技術者の皆様が自身の経験やこだわりについて、
熱心に語り合う姿が見られました。
テクニカルアカデミーは、
単に知識や技術を学ぶだけの場所ではありません。
同じピアノ業界で活躍する技術者同士が、
お互いの経験を共有し、
新たなつながりをつくることも大きな目的の一つです。
一人では解決が難しいことでも、
仲間と情報を共有することで新しい視点が生まれることがあります。
こうした技術者同士のネットワークも、
これからのピアノ業界にとって大切な財産になるのではないでしょうか。
第2回テクニカルアカデミーを終えて
今回、グランドギャラリー東京にて、
第2回テクニカルアカデミー
を開催いたしました。
ベーゼンドルファー、
スタインウェイ、
ベヒシュタイン。
世界を代表する3つのブランドには、
それぞれ異なる歴史があり、
異なる理想の音があり、
そして異なる設計思想があります。
今回のセミナーを通じて改めて感じたのは、
ピアノを単純に「良い・悪い」で判断するのではなく、その楽器が持つ個性や背景を理解することの大切さ
です。
楽器の歴史を知ることで、
なぜそのような構造になっているのか。
なぜそのような音が生まれるのか。
そして、技術者としてどのようにその個性を活かしていくべきなのか。
新たな視点を得ることができる貴重な時間となりました。
ご参加いただいた皆様、
誠にありがとうございました。
グランドギャラリーでは、
これからもピアノに携わる皆様が学び、
交流し、
そして新たなつながりをつくることができるよう、
テクニカルアカデミーや技術研修会を開催してまいります。
次回のテクニカルアカデミーも、ぜひご期待ください!





















